エゾシカ語研究

社会学等々

【Juiris-M】翻訳書の書誌情報を入力する方法

はじめに

既に過去の記事で紹介したように、文献管理ソフトZoteroの上位互換として作られた「Juris-M」というソフトがある。

このソフトの最大の売りは、「多言語対応」という点にある。

簡単に言うと、既存のZoteroだと日本語の著書も外国語の著書も同じフォーマットでしか文献リストを出力できないが、Juris-Mだとそれらを区別して出力できる。詳しい説明は過去の記事を参照して欲しい。

 

mineta.hatenablog.com

 

社会学評論スタイルガイド」に則った翻訳書の扱い

この記事で扱うのは、Juris-Mで「翻訳書」の情報を文献リストに出力するやり方だ。

筆者が専攻する社会学分野でメジャーな形式である「社会学評論スタイルガイド」では、翻訳書の情報の書き方について以下のようなルールがある。

 

書籍の場合

  • 原典の書誌情報.(訳者名訳,翻訳の出版年,『訳書のタイトル』出版社名.
    • 例:Fromm, Erich, 1941, Escape from Freedom, New York: Reinehart and Winston.(日高六郎訳,1951,『自由からの逃走』東京創元社.)

論文の場合

  • 原典の書誌情報.(訳者名訳,翻訳の出版年,「翻訳論文のタイトル」所収書の編者名編『所収書のタイトル』出版社名,翻訳論文の初ページ-終ページ.)
    • 例:McCarthy, John M. and Mayer N. Zald, 1977, “Resource Mobilization and Social Movements: A Partial Theory,” American Journal of Sociology, 82(6): 1212-41.(片桐新自訳,1989,「社会運動の合理的理論」塩原勉編『資源動員と組織戦略――運動論の新パラダイム新曜社,21-58.)

 

要するに、海外文献の原典を示したうえで、括弧付きで邦訳書の文献情報を載せる必要がある。

しかし普通のZoteroには「翻訳書」という概念がないため、こういう形で文献リストを出力することはできない。

そこを解決してくれるのがJuris-Mというソフトである。

Juris-M公式(?)の情報

翻訳書の書誌情報の入力方法については、既に公式の案内ページでレクチャーされている。

出典:「多言語出版物と文献目録」https://juris-m.readthedocs.io/en/latest/tutorial-ja.html#id6

 

juris-m.readthedocs.io

 

ただ、ここで案内されているのは「書籍」の場合のみで、「学術論文」の邦訳や、「論集のうちの1章」の邦訳の場合にどう入力すればよいのかが分からない。

論文の場合

色々試した結果、以下の入力項目に則ればうまく外国語論文の邦訳版を文献リストに反映できることが分かった。

今回出力してみるのは以下の論文。

 

Luhmann, Niklas, 1997, “Globalization or World Society: How to Conceive of Modern Society?,” International Review of Society, 7(1): 67–79. (大黒岳彦訳,2014,「『グローバリゼーション』か、それとも『世界社会』か」『現代思想』7(1): 86–101.)

 

文献情報の「その他」のところに入力する項目は以下の通り。

 

alt-translator: ||

alt-issued:

alt-title:

alt-container-title:

alt-volume:

alt-issue:

alt-page:

 

今回の例でいえば、次のように入力する。

alt-translator: 大黒||岳彦
alt-issued: 2014
alt-title: 『グローバリゼーション』か、それとも『世界社会』か
alt-container-title: 現代思想
alt-volume: 7
alt-issue: 1
alt-page: 86-101

 

「alt-container-title」がジャーナルの名前になる。

「alt-title」に論文自体の名前を入力する。自動で鍵括弧(「」)が付くので、論文タイトルに鍵括弧が含まれる場合、あらかじめ二重括弧(『』)にしておく。

「alt-translator」の欄は一応苗字と名前の間に||を入れるルールになっているが、社会学評論スタイルガイドを使うだけなら無視してもよい。

論集の場合

次の論集を引用する場合を考える。

Luhmann, Niklas, 1995, “Die Form ‘Person,’” Soziologische Aufklärung 6: Die Soziologie und der Mensch, Opladen: Westdeutscher Verlag, 142–54. (村上淳一訳,2007,「『人格』という形式」『ポストヒューマンの人間論――後期ルーマン論集』東京大学出版会,117–40.)

文献情報の「その他」に入れる項目は次の通り。

alt-translator: ||

alt-issued:

alt-title:

alt-container-title:

alt-publisher:

alt-page:

今回の例だとこう。

alt-translator: 村上||淳一
alt-issued:2007
alt-title: 『人格』という形式
alt-container-title: ポストヒューマンの人間論――後期ルーマン論集
alt-publisher: 東京大学出版会
alt-page: 117-140

 

以上。