エゾシカ語研究

社会学等々

ド素人がlogicoolのK855をソケット化した記録【静音化成功】

はじめに:K855クソうるせぇ問題

Logicool Signature K855というメカニカルキーボードがあります。14,000円程度で購入できる日本語配列の無線接続メカニカルキーボードです。同居人がちょうどキーボードを新調しようとしていたので、私はネットで調べてこの製品を薦めました。安定と信頼の(?)logicool製ですし、この値段で買える無線のキーボードは選択肢が他にほとんどないので、当初は無難な提案だと思っていました。

結論から述べると、この商品はゴミカス安易に他人に購入を薦めるべき代物ではありませんでした。

もう、とにかく打鍵音がクソうるせぇのです。どれだけゆっくり打鍵しても、ガチャガチャガチャと大きい音が鳴ります。同居人がオフィスに持っていって使ってみたところ、席がかなり離れた同僚から「あ、この音○○さんのキーボードだったんだ」と言われたそうです。自分の部屋で一人で使う分にはまぁよいのですが、周囲にひとがいる環境でこれを使うわけにはいきません(そうはいっても全然良い音ではないので一人で使っててもかなり気にさわりますが)。

同居人には当然「なぜこれを買わせたんだ」と文句をもらいました。かといって簡単に買い替えるにしては値段が高いものですから、なんとか静音化できないかと方法を調べてみました。

調べると同じようにK855の打鍵音がデカすぎる問題に取り組んでいる先人の方々がいました。

効果が見られる方法としては、主に①静音リング ②ホットスワップ化(ソケット化)の2つが挙げられていたので、それを試してみることにしました。

静音リングについては、「こころなしか少し静かになったかな?」くらいしか効果が得られませんでした。そもそもこのキーボードに使われているキースイッチの質が悪すぎるので、そこを変える以外には根本的な解決が見込めません。

そこで②の方法です。以下の記事を見つけ、自分でキーボードを分解してキースイッチを丸ごと交換することに決めました。

ameblo.jp

具体的な手順や必要な工具などはここに詳しく書かれているので、以下では、ここに書かれていないポイントの補足や購入した商品の紹介などをして、不幸にもK855を購入してしまった方々に向けて情報の補足ができればと思います。

ソケット化にかかる費用と時間

最初に述べておくと、ソケット化作業はすごく大変でした(*一応成功はしました)。はんだ作業のノウハウがある人ならそこまで負担に感じないのかもしれませんが、そうでないなら覚悟が必要です。

作業に入る前に、単に他の静かなキーボードに買い替えるのと、あくまでもこのK855にこだわって静音化作業をするのとで、全体的なコストでいえばあんまり変わらないということを指摘しておきたいと思います。

①単に他の静音キーボードに買い替える場合:K855の価格1万4千円の損失

②K855をソケット化する場合:工具類・キースイッチの出費(7,000-10,000円くらい)+作業時間(8-12時間くらい)+作業の過程でぶっ壊してしまう不安(∞)

時間や労力、そもそもうまくできるかわからないという不安などを考慮すれば、おとなしく新しいキーボードを買ってしまったほうが安く済むと思います。

私自身は、同居人にこのキーボードを薦めてしまった後ろめたさと、元々自作キーボード界隈に関心があったこともあり、ソケット化に手を出してみようと決断しました。

必要なものを揃える

工具類

上掲の記事で解説されていた通り、キーボードの分解には以下の工具が必要です。やってみた感じ、代替品の使用はかなり難しいと感じたので、安いものでよいので揃えたほうがいいと思います。それぞれ、少し情報を補足しておきます。

  • キーキャッププーラー:Amazonで200円くらいで入手可能
  • トルクスドライバー T6:これじゃないと駄目で、他のドライバでは代用できません。百均には売ってなかった。メルカリでトルクスドライバーセットが300円くらいで売っていたのでそれを買いました。Amazonだともうちょっと高くなります。
  • プラスドライバー +0か+1:百均でもなんでも。
  • 何かしら丈夫なヘラ:しっかりと硬い、先が細いヘラが必要です。カッターとかではダメです。百均やホームセンターで入手可能。
  • はんだごて/はんだ吸引器/はんだ:Amazonで「はんだゴテセット」みたいに調べると全部入ったものが2000円くらいで購入可能です。今後も継続的にはんだ作業をする予定があるひとはちゃんとしたものを買ったほうがいいですが、私はそうでないのでケチりました。個人的には、「はんだ吸引器」のほかに「はんだ吸い取り線」も含まれているセットをおすすめします。吸引器で吸い取りきれなかっはんだを取り除くのに便利なので。
    • 2000円くらいで初心者キット的なものが買えます

キースイッチ

キースイッチには3ピンのものと5ピンのものがあります。K855の基盤は3ピン対応なので、できれば3ピンのものを買いましょう。「できれば」というのは、5ピンを買った場合でも、不要な2つのピンをカッターナイフやニッパーで切れば3ピンにできるからです。ただし、非常に面倒くさいのでおすすめしません。

わかりにくいですが、左が元々の5ピンの状態で、右がカッターナイフで不要な2つのピンを切り取った状態

キースイッチを選ぶ際は、静音対応のものを推奨します。同居人いわくK855は軽すぎてミスタイプを連発してしまうのと、家電量販店で試打したところ「タクタイル」が好みとのことだったので、静音タクタイルで安価なものを探すことにしました。結論として、OutemuのSilent Cream Yellow Proがコスパ的にも静音性の面でも優秀なようだったので、アリエクで購入しました。K855は88キーなので、90個購入。Amazonや遊舎工房でも入手できますが、おそらくアリエクが最安と思われます。定価だと3,719円になっていますが(執筆時現在)、しょっちゅうセールで安くなっているので、タイミングを狙えばもっと安く入手できます。 

ただし、このOutemuのSilent Cream Yellowは「5ピン」です。手作業で88個のキースイッチの不要な2つの軸を切り取らねばなりません。私は作業に入るまでこの3ピンとか5ピンとかいった区分があることを知りませんでした。みなさんはぜひはじめから3ピンのものを入手していただければと思います。

ソケットピン

上掲のブログ記事ではMill-Maxの「3305-2-15-80-47-27-10-0」が推奨されています。ホットスワップ非対応のキーボードをソケット化する際はこれが定番なようですが、いかんせんすっごく高いです。私はAliExpressの怪しげな安いソケットピンを購入しました。Mill-Maxのピンを買うとなるともう一台K855が買えてしまうので、やむをえません。

こういう寸法のやつを買ってください

K855のキー数は88個で、ピンはキー1個あたり2つずつ必要なので、200個入りのものを買ました。今見直すと値段が上がって4500円くらいになっていましたが、買ったときは2800円くらいでした。同じ寸法の別の商品を探せば今も安いものがあるはずです。

ちゃんと動作してくれるか不安でしたが、結論としては全く問題なく動いてくれました。アリエクの謎パーツ万歳!

ソケット化作業

具体的な手順は上掲記事のとおりです。いくつか注意点や、記事とは違った点などについて触れてきます。

①記事には、Outemuの軸とK855のキーキャップの相性が悪い可能性が示唆されていましたが、少なくとも私が使用したOutemu Cream Yellow軸については全く問題ありませんでした。

②はんだ吸引器は使い方にコツが必要なので、勘で使わずあらかじめ使い方を調べましょう。私は最初適当に使ってうまくいかず、基盤を焦がしたりしました。正しい使い方ではない気がしますが、私の場合、利き手である右手に吸引器を持ち、左手ではんだごてを持つとスムーズに作業ができました。はんだが溶けている間に吸引器を使わないといけないのでかなり瞬発力が求められます。また、吸引器だけだとはんだが中途半端に残ることがあるので、そこは吸引線できれいにしてあげるとよいです。

③ソケットピンをはんだづけする際は、はんだだけを温めて溶かすのではなく、コテでソケットピンの方をきちんと温めてからはんだを当てるとうまくいきます。

 

以下、作業の様子。

「田植え」作業の様子。ピンはキーボードをひっくり返すと落ちてしまうので、何かしらのテープで留めておきます(耐熱のものがよいと思われますが、私はふつうのマスキングテープでやりました)

はんだづけが完成した様子。きれいにできなかったところが多々ありますが、動けばよいのです。

キースイッチ&キーキャップをはめていきます。これで完成!


まとめ

K855のソケット化は、作業経験のないド素人でも無事できました。

ただ、大変なのは大変なので、潔く諦めてホットスワップに対応しているメカニカルキーボードを新調するのが良いと思います。Keychronとかおすすめです。

もしソケット化をするのであれば、ソケットピンはMill-Maxに拘る必要はなく、アリエクで安価なものを買ってしまって大丈夫です。はんだごてや吸引器も、特別いいものを揃えなくても十分作業ができました。

 

以上です。

 

 

 

 

 

 

 

 

Zoteroで社会学の文献管理【社会学評論スタイルガイド第3版対応】

 

1. はじめに

1-1. 本稿の目的

①社会学を専門とする*1院生・研究者に向けて文献管理ソフト(Zotero)導入のメリットを紹介すること。

②Zotero導入の具体的な手順と運用方法について示すこと。

 

*わざわざ対象分野を社会学に限る理由としては、筆者の専攻が社会学であり他の分野については勝手がわからないからというのと、社会学は他の人文社会系の分野に比べて相対的にZoteroを導入するメリットが大きいから(後述;社会学評論スタイルガイドに対応したCSLが既に存在するから)である。とはいえ、本記事の内容は、一部を除けば社会学以外の人文社会科学諸分野の方々にも参考にしていただけるだろう。

1-2. 背景

半年ほど前に、Twitter(現X)にて人文・社会科学系の文献管理について以下のような投稿をしたところ、思いのほか大きな反響があった。

文献管理ソフトとは、その名の通り文献のPDFファイルや書誌情報、メモ等を管理するためのソフトウェアのことである。本稿で紹介するZoteroをはじめ、Endnote、Paperpile、Mendeleyなど、名のよく知られたサービスが複数ある。これらは、基本的には自然科学系分野での普及率が高い一方で、人文社会系においてはそもそも存在自体が十分に認知されていない段階にある。

その理由として考えられるのは、上記ツイートの通り「誰も教えてくれないから」ということだけでなく、そもそも人文社会系は文献管理ソフトを導入するメリットが自然科学系に比べて小さいというのがある。引用RTで幾人かに示唆していただいた通り、特に人文系の一部分野では、ジャーナルの電子化があまり進んでいない傾向にあり、論文が紙媒体でしか手に入らなかったり、扱う書誌情報がネット上では拾えなかったり(=文献管理ソフトの売りであるプラグインが使えない)、ソフトの多くが多言語(というか非英語)の扱いに弱かったりする*2ので、デジタルツールの導入とあまり相性が良くなかったりするのだ。

とはいえ、そうした一部分野を除けば、人文社会系でも文献管理ソフトを導入するメリットがおおいにある、というのが本記事で伝えたいことだ。少なくとも、社会学の分野で研究に従事している筆者は、Zoteroの恩恵を大いに享受している。
具体的には、以下の項目にいくつか当てはまるものがあれば、是非一度文献管理ソフトの導入を検討してみてほしい。

  • 論文をJ-StageやCiNii、Google Scholar等でダウンロードすることが多い
  • 引用する論文や本の書誌情報の多くがネット上で取得可能である(CiNii, Google Scholar, Amazon等)
  • PCやタブレットで論文を読むことが多い
  • 紙の文献をスキャンしてPDF化することが多い
  • ファイル名や書誌情報を手打ちで入力するのが面倒と感じている
  • 引用した文献を末尾の文献リストに入れ忘れることがしばしばある
  • よく使う引用フォーマットに対応しているCSLが入手可能である
    • 注)本稿が「社会学の文献管理」と題しているのは、この分野でよく使われる「社会学評論スタイルガイド」のCSLが既に存在するからである。
      注)CSLのリストはZotero Style Repository等で検索可能。ただし、GitHubや個人ブログ等でも有志が作成した非公式のCSLが公開されていることがある。

余談:Juris-Mについて

私は過去に、Zoteroの多言語対応版ソフトである「Juris-M」を紹介する記事を書いたことがある。このソフトは、名古屋大学法学部元教員のFrank Benett氏によって開発されたもので、複数言語の入り混じる文献リストをかなり正確に出力する機能を持っている。これにより、日本語文献・外国語文献・翻訳文献でそれぞれ引用割注や文献リストの書き方が異なるような引用スタイルに対応可能となるので、従来の文献管理ソフトの人文社会系との相性の悪さを払拭してくれるような存在といえる。

mineta.hatenablog.com

Juris-Mは素晴らしいソフトだが、いくつかデメリットがある。

  • アップデートや修正が不定期
    • そのためかブラウザ拡張機能がしばしばChromeのストアから消えたりする
  • ソフトの開発・メンテナンスがどうやらBenett氏一人によって担われており、開発が今後も継続されるか否かが不透明
  • マイナーすぎて情報が出てこない

現状少なくとも筆者のPC環境下では使用可能であるが、動作がやや不安定なので、他人に薦めるのはやや気後れがする。Juris-MはZoteroをベースにしたソフトで、多言語対応機能以外の部分はすべてZoteroと同じなので、使うとしてもZoteroに慣れてからの方がよい。それに、ZoteroからJuris-Mへの移行はきわめて容易なので、まず前者を使ってみて興味があれば後者に移ればよい。

今回はひとまず、文献管理ソフト初心者の方向けの解説を目的としているので、Juris-Mの話は一旦置いておいておこうと思う。

2. Zoteroでできるようになること/できないこと

2-1. そもそも文献管理ソフトって?

そもそも文献管理ソフトを入れると何がうれしいのか、という点については既に多くの紹介記事や動画が存在するため、ここで改めて一から説明することはしない。文献管理ソフトの機能についてそもそも全くイメージが湧かないという方は、以下のリンクを参照してみてほしい。

gigazine.net

youtu.be

2-2. 個人的に重宝している機能

上に挙げた記事で紹介されているように、Zoteroを導入することで、さしあたり次のような作業が可能になる。

  • ブラウザの拡張機能(Zotero Connector)を通して、論文の書誌情報とPDFを一括で取り込む
  • 論文にタグをつけて管理する
  • WordやGoogleドキュメント上でZoteroと連携して引用を行い、文献リストを自動で出力する

これらの機能は一般的によく知られているかと思う。Zotero本体とコネクターを導入すればすぐにできるようになる。

上記に加え、筆者が個人的にZoteroを導入してよかったなと感じている点は、以下の通りである。いくつか設定をいじる必要があったり、プラグインを導入する必要があったりするためセットアップが若干面倒だが、導入さえ済ませてしまえば後の作業がとても楽になる。

  • モバイルアプリ版との連携:PCとiPad等を同期することで、PCでダウンロードした論文をiPadで読んだり、iPad上で論文に対して行った書き込みやメモがPC上で閲覧できたりする。
  • 社会学評論スタイルガイドに準じた文献リストの自動出力:後述。これはZoteroをインストールするだけではできるようにならない。邦文書/欧文書/翻訳書を区別して書誌情報を出力可能
  • ファイルのリネーム機能:論文をZoteroに取り込むと、そのPDFのファイル名を自動で任意のフォーマットに書き換えてくれる(例:「筆者名 ‐ 刊行年 ‐ 題名」)。エクスプローラーで論文を管理していると、PDFをダウンロードしたときにファイル名をわざわざ自分で書き直す必要があるので、その手間がなくなるのは大きい。
  • 文献・書誌情報・メモを一元的に管理:エクスプローラーやExcel等で文献管理するデメリットの一つは、文献ファイルとその書誌情報の格納場所が別々になってしまうという点にある。Zoteroを使うとそれを一括で管理できるので便利。
  • 同一文献を複数フォルダで表示可能:たとえば、「リスク論」と「エコロジー論」のいずれにも該当するような論文を保存したいとき、これを「リスク」のフォルダのみに入れてしまうと「エコロジー」のフォルダを開いたときにこの論文が出てこないことになる。とはいえ一つのファイルをコピーして2つのフォルダに入れておくのは手間だし容量を食う。しかしZoteroにおいては容量を増やすことなく同一のファイルを複数のフォルダに保存可能なので、「あの論文どのフォルダに入れたっけな…」と迷うことがなくなる。
  • PDFの本文内容を横断的に検索:Zoteroに取り込んだ文献の本文内容は、テキスト情報が含まれていれば、一括で横断的に検索することができる。「高度な検索」>「添付ファイルの内容」を指定して、「○○○」というキーワードで検索をかけると、「○○○」という言葉に言及がある文献ファイルをざっと表示してくれる(ただし精度にはややムラあり)。Windowsのエクスプローラーではデフォルトだとこれができない。
  • DeepLとの連携:別途プラグイン(Zotero PDF Translate)とDeepLのAPI(制限付き無料)を取得することで、Zotero上で選択した文字列をDeepLで翻訳→翻訳結果を注釈欄に保存しておくことができる。外国語文献を読む際にとりあえずざっと内容を掴みたいときや、DeepLで下訳を作ってから自分で訳文を作りたいときなどに使いやすい。
  • 生成AIとの連携:筆者は使っていないが、お好みの生成AIのAPIを取得しプラグイン(「Zotero-GPT」等)と連携させれば、Zotero上でChatGPTやGemini, Claudeなどを使用することができる。これにより、Zotero上で論文を要約させたり、翻訳をさせたり、ポイントについて解説をさせたりすることができる。
  • 本文中の文献注にカーソルを重ねると文献の書誌情報が表示される:Zotero 7から新しく装備された機能。以下の画像のように、本文中に出てくる引用の割注(Man, 1986)にマウスカーソルを置くと、論文末尾に記載されている文献リストの該当箇所が表示される。本文中の引用がどのような文献からのものなのか確認したいときに、いちいち末尾の文献リストまでスクロールする必要がなくなって便利である。文末脚注についても同様の機能がある。ただしまだ精度は低い。

    画像に写っていないが、本文中の「Man」の箇所にマウスカーソルを置いている

2-3. Zoteroではできないこと

Zoteroには非常に魅力的な機能が多く搭載されている一方、現段階では技術的な制約でできないこともある。あらかじめ、何ができないのかについても触れておこう。

文献管理ソフトの大きな魅力の一つは、Wordその他の文書作成ソフトにおいて自動で文献リストを出力してくれることである。

「社会学評論スタイルガイド」によると、論文末尾の文献リストは、

和文の文献も欧文の文献も含めてすべての文献を,著者または編者(共著・共編書の場合は筆頭者)の姓のアルファベット順にリストアップする

必要がある。

しかしZoteroの機能だけでは、日本語著者の読みを認識してアルファベット表記順に並べる、などという器用な芸当はできない(*先述の多言語対応文献ソフト「Juris-M」ではある程度高い精度でそれができるのだが、これについては別稿で解説予定)。

たとえば、以下のように本文中で和文・欧文の文献を引用したとする。

すると、現時点では、自動出力される文献リストにおいて、外国語文献と日本語文献が別々に記載されてしまう。しかし、本来ここは、赤堀(2021)→Luhmann(1984)→Luhmann(1990)→三上(2013)→Nassehi(2008)の順に並んでないといけない。

欧文文献→邦文文献の順番で別々にリスト化される。

またそれ以外に、現状の「Juris-Mで社会学評論」CSLにはいくつか体裁面で細かな修正点がある。たとえば、

  • 翻訳書の書誌情報をくくる括弧が半角で出力されてしまう
  • 字下げが全角4文字分になってしまう(本来は2字下げ)
  • ドイツ語の文献が英語と同様の扱いになるため、編者がHrsg.と表記されなかったり複数著者がundでなくandで繋がれてしまう

これらはCSLを編集することで修正可能と思われるが、あいにく筆者にそのあたりの知識がない。(現在勉強中なので、もし修正バージョンが作成できたら公開する予定。)

なお、これらの問題点は、暫定的な解決案としてNotebook LMを使用することによりあまり手間を掛けず修正作業が行えるので、それについても後で解説する。

2-4. 本稿で目指すZoteroの形

Zoteroの諸々の設定をどのように行うかや、どのプラグインを入れるかは、各人が理想とする文献管理のスタイルに大きく左右される。たとえば、論文を紙媒体でしか読まなず書誌情報のみをZotero上で管理したいという人は、Zotero本体とChromeの拡張機能、引用スタイルの設定くらいで作業が終わるが、筆者が使っているような上述の機能をZotero上で可能にしたい場合、WebDAVの設定やプラグインの導入が必要となる。

以下ではさしあたり、「PC(Windows)・タブレットで論文を読み、Wordで執筆作業を行う、社会学評論スタイルガイドを使うの方向けのZotero」環境構築の方法について解説していく。各人の目的や研究環境に照らして不要と思われる工程については適宜スキップしていただきたい。

3. 導入

3-1. Zoteroのインストール

まずはZoteroのダウンロードページにアクセス。

www.zotero.org

3-2. Zotero Connectorの導入

CiNiiやGoogle Scholarから論文のファイルと書誌情報を取り込む際に必要となるブラウザ拡張機能をダウンロードする。

現在、Chrome, Edge, Firefox, Safariに対応した拡張機能が用意されている。

www.zotero.org

Zotero Connectorがダウンロードできたら、一旦動作確認をしてみるとよいだろう。

あらかじめZotero上で「マイ・ライブラリ」の中に適当なフォルダを作っておく。J-Stage等で任意の論文のページを開き、Zotero Connectorのボタンをクリック(ボタンはピン留めしておくとよい)。

Zoteroを見てみると、当該論文の書誌情報とPDFが指定フォルダ内に取り込まれているはずだ。

3-3. 同期設定(←結構手間がかかるので後回しでもよい)

この作業は一つのPCでしかZoteroを使用しない人は省略可能

3-3-1. 同期方法の種類

Zoteroを複数端末で使いたい場合、同期の設定を行う必要がある。

Zoteroが提供するクラウドストレージは、無料版では300MBまで利用でき、それ以上の容量が必要な場合は、有料プラン(*とても高い!!)に加入する必要がある。300MBなどあっという間に尽きてしまうので、Zoteroの同期機能を無料で使用したい場合、別の方法をとる必要がある。

選択肢は2つある。

  1. GoogleドライブやOne Driveなどのオンラインストレージを保存先に指定する(→以下3-3-2.へ)
    複数PCで同じZoteroを使いたい、かつタブレットではZotero公式アプリを使わない場合に有効。PCでのみZoteroを使用する人、あるいはタブレットを使用する場合でも公式アプリではなくPDF Expert等のPDFリーダーを使いたい人はこちら*3
    :無料枠はGoogleドライブなら15GB、One Driveなら5GB。
  2. WebDAVを使う(→以下3-3-3.へ)
    :複数PC間での同期 + iPad等でZoteroアプリを使いたい人向け
    :無料枠は20GB(InfiniCLOUDの場合、執筆時現在)
    :無料枠で足りない場合は1. と同様サブスクのほか、買い切り型WebDAV(Pcloudなど)を購入するという選択肢もある*4。筆者は今のところ無料枠で足りている。確認したところ、現状約1200アイテムで10GB使用という状況だった。
3-3-2. Googleドライブ等を使用する場合

1. の方法を取りたい場合、任意のオンラインストレージのデスクトップ版の導入と「ZotMoov」というプラグインの導入が必要となる。

もしGoogleドライブを使うのであれば以下の記事を参照。

lab.nounai-librarian.com

ただしこの記事はやや古く、前バージョンのZotero 6 を対象とした解説になっている。ZotFileというかつて定番だったプラグインが紹介されているが、これはZotero 7に対応していない。現在は代わりにZotMoovというプラグインを入れる必要がある。以下の記事を参照のこと。

plaza.umin.ac.jp

同期設定がうまくいっていれば、Zoteroに論文を取り込んだ際、Googleドライブの指定フォルダの中に当該論文のPDFファイルが保存されているはずだ。

3-3-3. WebDAVを使う場合

ZoteroのモバイルアプリはGoogleドライブ等のクラウドストレージに対応していない。公式の有料クラウドかWebDAVを使用することで同期することが可能となる。

WebDAVを使用した同期方法については以下の記事がとても分かりやすい。筆者もこの記事と同様InfiniCLOUDを使っている。前にZotero 6 との同期が上手くいかなくなったことがあったが、最新版のZotero 7 では問題なく同期ができている。

なおInfiniCLOUDは登録時に紹介コード(WTJP6)を入力すると5GBもらえる。

necostat.hatenablog.jp

PC版とモバイルアプリ版の同期設定がそれぞれうまくいっていれば、PCで取り込んだ論文がiPadでも読めるようになるはずだ。また、iPadで行ったハイライトや書き込みがPC上でも読めるようになる。

3-4. CSLの導入

文献管理ソフトの素晴らしいところは、指定した引用スタイルに沿って文献割注を入れたり、文献リストを自動で出力したりすることができる点にある。その引用スタイルの指定に使うのが、CSL(Citation Style Language)と呼ばれるファイルフォーマットである。

CSLはZoteroにデフォルトで入っているものを使うか、ネット上で他の誰かが公開してくれているものを使うか、そうでなければ自分で作る。

ここでは、既存の「社会学評論スタイルガイド(第3版)」対応CSLを導入する手順を解説する。

①まずはGitHubの以下のページにアクセス。

github.com

このページでも説明されている通り、このCSLは元々Juris-M(前述)にデフォルトで備え付けられていたものである。有志の方がそれを改良して公開してくれている(ありがとうございます)。

Juris-M用のCSLとはいえ、Juris-Mそのものが元々Zoteroベースのソフトなので、このCSLはZoteroでも問題なく動く。(*ただし、Juris-Mと違い、邦/欧文献の混在する文献リストを自動でアルファベット順に並べてくれる機能は失われる。後述するように、この点については手動で修正するか、生成AIを活用することでカバーする。)

②スクロールして、下の画像でマークした箇所をクリック。

次のページのダウンロードアイコンをクリック。

これで「jss-lewis-sato.csl」というファイルがダウンロードできるはず。

③ダウンロードフォルダからjss-lewis-sato.cslをダブルクリック→インストールをする。

*【もし③がうまくいかなかった場合】

エクスプローラー上でZoteroのインストールされている場所を開く。

デフォルトだと、「C:\Users\[ユーザー名]\Zotero」がそれに当たる。よく分からない方は、Zoteroを開き、保存済みの適当な文献を右クリック→「Show File」でストレージが開くので、そこから2個前に戻ればOK。

そうしたら、「styles」というフォルダがあるので、この中に先ほどダウンロードしたCSLファイル(jss-lewis-sato.csl)を入れておく。

④最後に、Zoteroを開き、「編集」>「設定」>「エクスポート」>「アイテムのフォーマット」から、「Juris-Mで社会学評論」を選択。

これでZotero上で社会学評論スタイルガイド対応の引用形式が使えるようになった。

まだ完成ではないが、一旦この段階で、CSLがうまく作動してくれるかチェックしておくとよいだろう。Zoteroに保存した適当な文献を選択して「Ctrl + Shift + C」を押したあと、適当な場所にペーストしてみるとよい。問題なく導入ができていれば、スタイルガイドに沿った形で書誌情報を出力してくれているはずだ。

このとき、場合によっては日本語文献の書誌情報が外国語文献の形式で出力されてしまったり、その逆が起こったりすると思う。日本語文献と外国語文献を区別して引用形式を切り替えるためには、書誌情報の「言語」フィールドが正しく入力されている必要がある。言語欄は、ブラウザから論文を取り込んだときに自動で補完してくれない場合がしばしばあるので、これに対応してくれるプラグインを入れておく必要がある。

3-5. プラグイン「Linter for Zotero」の導入

Zotero言語フィールド欄を自動で補完してくれるプラグインとして、「Linter for Zotero」というものがある。これを入れておくと、文献タイトルから使用言語を自動で判別してくれるので、自分でいちいち手入力する手間が省ける。

①以下のリリースページから最新のxpiファイルをダウンロード。

github.com

 

②Zoteroアプリを開き、「ツール」>「Plugins」> [右上の歯車アイコン] >「Install Plugin From File」を選択。エクスプローラーが開くので、さきほどダウンロードしたxpiファイルをクリックする。これでプラグインが使えるようになる。

③Zoteroの「編集」>「設定」からLinter for Zoteroの設定を行う。

デフォルトだと、「Title」の"Title should be "Sentence case""にチェックが入っている。これがオンの状態だと、英語文献(というかアルファベットが使用されている文献全般)を取り込んだときに、先頭の一文字のみが大文字になり、それ以外がすべて自動で小文字になる。少なくとも「社会学評論スタイルガイド」を使いたい人はチェックを外しておくべきである

また引用スタイルに関係なく、ドイツ語文献を扱う場合は絶対にこのチェックを外しておく必要がある。Linterは文献タイトルが英語だろうがドイツ語だろうが関係なくこのルールを適用してしまう。ドイツ語では名詞の頭文字を常に大文字にするので、勝手にタイトルを小文字にされると困る。

④次に、同じ設定画面の下部にある「Language」欄を入力する。

ここは各々、研究に使う使用言語を入力しておけばよい。筆者は基本的に日本語とドイツ語、英語の文献を扱うので、下のように入力している。コードについては、ISO 639-1コードを参照のこと。

⑤これでLinter for Zoteroのセットアップが完了した。ブラウザから論文を取り込むと、自動でLinterが起動して「言語」フィールドを埋めてくれるはずだ。

なおLinterは、既にZoteroに保存済みの文献の言語情報も埋めてくれる。Zoteroの「マイ・ライブラリ」から、「Ctrl + A」で全選択>右クリック>「Linter」>「Auto Set Item Language」を選択すればOK。

以上の作業により、Zoteroが欧文/邦文を区別して引用形式を切り替えることが可能になった。

3-6. その他のおすすめ設定

必須ではないが、ついでに以下の設定を済ませておくことをおすすめする。

  • リネーム機能の設定
    • 「編集」→「設定」→「一般」→「File Renaming」→「リンクされたファイルの名前を変更」にチェック
    • デフォルトでは「ファミリーネーム - 刊行年 - タイトル」になっているが、これは「Customize Filename Format」のところから変更可能
  • PDFを開くソフトの指定
    • 「編集」→「設定」→「一般」→「Reader」→「PDF書類を開く」から、Zotero上でファイルを開くのか、PCのデフォルトアプリで開くのかを選んでおく(個人的には前者のほうが使いやすいと思う)
  • スナップショットのオフ
    • 「編集」→「設定」→「一般」→「ファイルの取り扱い」→「ウェブページからアイテムを作成するときに自動的にスナップショットを作成する」にもしチェックが入っていたら外しておく

4. 一旦動作確認:Wordで文献リストを自動作成してみる

ここまで作業が済んだら、Zoteroのセットアップがおおよそ完了したといえる。(*翻訳書の取り扱いについては次節で解説する。)

Word上で文献リストの出力が問題なく作動するか確認しておこう。

Wordを開くと、新たに「Zotero」タブが表示されるようになっているはずだ。

「Add/Edit Citation」またはショートカットアイコンをクリックすると、以下のようなポップアップが出てくるので、「Juris-Mで社会学評論」を選択する。

すると以下のような検索画面が出てくる。

検索欄に自分が引用したい文献の著者名または文献名(刊行年や掲載雑誌名等でもOK)を入力すると、Zoteroに保存されている文献情報が選択できるはずだ。

次に、Zoteroタブから「Add/Edit Bibliography」クリック。

問題なくプラグインが機能してくれれば、本文中の引用に対応した文献リストが自動作成されるはずだ。

任意:クイックアクセスおよびショートカットキーの設定

Word上でZoteroの引用コマンドを使うとき、毎回マウスでZoteroタブを選択して「Add/Edit Citation」ボタンを押すのは面倒くさい。クイックアクセスかショートカットキーを設定しておけば、引用コマンドの呼び出しがとても楽になる。

クイックアクセスの設定方法

クイックアクセスを設定すると、Wordの上部左側に以下のようなボタンを配置することができる。これを押せばわざわざZoteroタブに移動することなしに「Add/Edit Citation」を呼び出せる。

Wordの「ファイル」タブから「オプション」を開き、「クイックアクセスツールバー」>「コマンドの選択」>「Zoteroタブ」>「Add/Edit Citation」>「追加」を選択すればOK。

ショートカットキーの設定方法(推奨)

Wordの「ファイル」タブから「オプション」を開き、「リボンのユーザー設定」>「ショートカットキー:ユーザー設定」を開く。「分類」の一覧に「Zoteroタブ」があればそこから、なければ「マクロ」から、「ZoteroAddEditCitation」を選ぶ。「割り当てるキーを押してください」の箇所にお好みのショートカットキーを入力すればOK。

なお筆者は「Alt+Z」に指定している(他のデフォルトのショートカットキーと被らないのと、Z=Zoteroと覚えやすいから)。

これで、キーボードの操作だけで引用コマンドを使うことができるようになった。

5. 翻訳書の書誌情報の入力方法

さて、ここまで来ればセットアップはおおよそ完了といえる。しかし現段階ではまだ、翻訳書の書誌情報の出力ができない。

「社会学評論スタイルガイド」で指定されている引用形式では、翻訳書は原書の情報の後に括弧書きで翻訳書の書誌情報を記載することになっている。たとえばフロムの『自由からの逃走』は次のようになる。

Fromm, Erich, 1941, Escape from Freedom, New York: Reinehart and Winston.(日高六郎訳,1951,『自由からの逃走』東京創元社.)

また、本文中での引用時には、引用文のあとに括弧書きで、

(Fromm 1941=1951)

というふうに、著者名のあとに原書刊行年と訳書刊行年を併記したうえ、間をイコール記号で結ぶ必要がある。

前手順で導入した「Juris-Mで社会学評論」は、そうした翻訳書の特殊な書誌情報の書き方に対応している稀有なCSLである。ここでは、上の例のようにフロムの『自由からの逃走』の書誌情報をZoteroで出力できるようにする手順を見ていこう。

 

①原書の書誌情報を取り込む

Google Books等で検索し、Escape from Freedomの原書の書誌情報をブラウザ拡張機能(前述)を使って取り込む。この本のように、複数のバージョンが存在する書籍を扱うときは、取り込むデータが自分の参照している本のそれと一致しているか注意すること。

②情報の過不足を埋める

Zoteroの書誌情報フィールドのうち、抜け落ちているものがあれば補填する*5(Google Booksだと出版社の所在都市が抜けやすいので注意*6)。「スタイルガイド」に準拠した書誌情報を出力するためには、タイトル・著者名・都市・出版社・出版年・言語のフィールドがそれぞれ正しく記入されている必要がある。

こんな感じで入力できていればOK

③「その他」フィールドに翻訳書の情報を書き込む

翻訳書の書誌情報は、以下のルールに従って「その他」フィールドに手打ちする必要がある(論文や論集の場合の書き方は後述)。

alt-issued:[=翻訳書の刊行年]
alt-publisher:[=翻訳書の出版社]
alt-title:[=邦訳タイトル]
alt-translator: [=翻訳者の氏名]

たとえばフロムの『自由からの逃走』の場合は、「その他」フィールドに以下のように手入力する*7

 

④言語フィールド欄を「en>ja」に変更する

Zotero側がこの本を「翻訳書」として認識してくれるように、言語フィールドの欄を「en>ja」と入力する。言語欄に半角不等号とjaを付け足すことで、この本が英語からの邦訳書であることが認識されるようになる。

⑤確認

最終的に、以下のように各フィールドが埋められていればOK。

動作確認をしてみよう。

Wordを開き、Zoteroタブまたはショートカットキー等から「Add/Edit Citation」を呼び出す。検索欄に「Fromm」などと入力し、「Escape from Freedom」を選択する。

すると下の画像のように、スタイルガイドの形式に従って、「(著者名 原書刊行年=訳書刊行年)」の形で引用割注を出力してくれる。

次に、「Add/Edit Bibliography」をクリックして文献リストも出力してみよう。

うまくいっていれば、翻訳書の書誌情報がスタイルガイドに準拠した形で出力されるはずだ。

⑥翻訳文献が論文や論集の場合

翻訳されている文献が書籍ではなく論文や論集の場合、翻訳文献のページ数や論集タイトルなどを追加で入力しておく必要がある。その場合の入力ルールは以下の通り。

・学術論文の場合

alt-translator: [=翻訳者氏名]
alt-issued:[=翻訳文献刊行年]
alt-title:[=邦訳タイトル]
alt-container-title:[=掲載誌タイトル]
alt-volume:[=掲載誌の巻]
alt-issue:[=掲載誌の号]
alt-page:[=掲載ページ数]

・論集の場合

alt-translator: [=翻訳者氏名]
alt-issued:[=翻訳刊行年]
alt-title:[=邦訳タイトル]
alt-container-title:[=論集タイトル]
alt-publisher:[=翻訳書出版社]
alt-page:[=掲載ページ数]

*なお、翻訳者が複数名いる場合、alt-translatorの欄を翻訳者の数だけ増やすか、単に複数翻訳者の氏名をナカグロ(・)で繋いで書いておけばよい(出力される結果は同じ)*8

 

論文の場合の入力例として、以下の翻訳論文の書誌情報をZoteroに保存したい場合のことを考えよう。

Luhmann, Niklas, 1997, “Globalization or World Society: How to Conceive of Modern Society?,” International Review of Society, 7(1): 67–79. (大黒岳彦訳,2014,「『グローバリゼーション』か、それとも『世界社会』か——現代社会をどう概念化するか?」『現代思想』7(1): 86–101.)

まずはGoogle Scholar等で、Luhmann (1997) の原論文の情報を取り込む。次に、Zoteroの「言語」欄を「en>ja」に変え、そして「その他」欄に以下のように情報を入力する*9

alt-translator: 大黒岳彦
alt-issued: 2014
alt-title: 『グローバリゼーション』か、それとも『世界社会』か——現代社会をどう概念化するか?
alt-container-title: 現代思想
alt-volume: 7
alt-issue: 1
alt-page: 86-101

 

以上のように、翻訳文献の場合は一つ一つ手打ちで書誌情報を入力する必要があるため若干面倒だが、一度この作業をやっておけば後の執筆作業がかなり楽になる*10

 

6. 文献リストを著者順に並べる(+細かい問題の調整)

6.1 Zoteroが出力するリストは完全ではない

先述したように、ここまでの作業で出力可能になる文献リストは、欧文文献と邦文文献が別々に記載されてしまい、何らかの方法で著者姓のアルファベット順でソートを行う必要がある。

(再掲)

欧文文献→邦文文献の順番でリスト化される。
本来ここは、赤堀(2021)→Luhmann(1984)→Luhmann(1990)→三上(2013)→Nassehi(2008)の順に並んでないといけない。

これに加えて、現状の「Juris-Mで社会学評論」CSLには、ほかにも修正されるべき細かい点がいくつかある。たとえば、「スタイルガイド」には文献リストの表記に関して以下のようなルールがある。

  • 論文タイトルに一重カギ括弧が含まれる場合、文献リストにおいてはそれを二重カギ括弧に置き換える必要がある。
  • ネット上で書誌情報を取り込んだ際、日本語文献の副題がコロン(:)の後に表記されることがあるが、文献リストにおいては二倍ダッシュ(——)で主題と副題をつなぐ必要がある。
  • ドイツ語文献に関して*11:著者が複数いる場合は著者の間を「and」ではなく「und」で繋ぐ。編者については、「ed.」や「eds.」ではなく「Hrsg.」とする。

例として、英語・ドイツ語・日本語が混在する以下のような文献リストを出力したとする。

赤でマークをした箇所に表記の誤りがある。

赤いマークの箇所に見て取れるように、表記のミスが生じる。上から2つ目の文献はドイツ語文献なのでandではなくund、edsではなく(Hrsg.)と各必要があるのと、出版社の所在地が抜けている。また渡會(2004)は「『構築主義論争』再考」と二重カギカッコを使う必要があり、赤堀(2021)は副題をつなぐコロンが2倍ダッシュに置き換えられる必要がある。

これらの修正作業を行う方法は2通りある。
一つ目は手作業で直す方法で、二つ目はAIを使って校正する方法である。
前者は分かりやすく確実だが手間がかかる。
後者は非常に楽で早いが、そのかわり注意は必要だ。文献リストは論文の信頼性に直接的に関わる箇所であるので、下手な使い方でAIに修正作業を依頼して、リストに架空の論文を記載してしまった、などということがあってはいけない。

少なくとも、筆者の経験範囲内では、後述の方法を取る限りではいわゆるハルシネーション(実在しない文献を挙げたりすること)は生じておらず、かなり正確に校正作業を行ってくれる。方法の解説はするが、使用については自己責任でお願いしたい。

6-2. 手作業で修正する方法

まず、手作業でリストを修正する際は、①Zoteroの側の情報を補完し、②残りはWordで直接手を入れる。おおよそ以下の手順を踏むとよい。

  1. Word上で文献リストを自動出力する
  2. 出版社の抜け等があった場合は、Zotero上で当該文献の「出版社」フィールドを埋める
  3. Wordに戻り、「Zotero」タブから「Refresh」を押す
  4. 残りは手作業で修正するので、Wordの「Zotero」タブから「Unlink Citations」を選択する
  5. 要修正項目を手で直す

文献リストがあまり長くない場合はこのように手で直すのが早くて確実だろう。

 

6-3. 生成AI(Notebook LM)を使用した修正方法

文献リストがある程度の長さになってくると、手作業でリストの順番を手直しするのはかなり手間がかかる。

以下では、生成AI(Notebook LM)を使って上述の問題を解消する方法を紹介する。他の生成AI(Gemini, Claude)を使用することも可能ではあるが、この作業に関してはNotebook LMが最も精度が高く安定している(なお、試したところChat-GPT 5は精度が低かったのでおすすめしない)。

Notebook LMでは、ユーザー自身がソースを指定することができるので、AIが勝手にネットから信頼できない情報を拾ってくることを避けられる。以下で行うように、「社会学評論スタイルガイド」のPDFと自身の使用言語に即したプロンプトを読み込ませておけば、非常に高い精度でリストの校正を行ってくれる。

以下、具体的な手順。

  1. Wordで文献リストを自動出力する。
  2. 下記リンクからNotebook LMを開く。Googleのアカウントがあれば無料で利用可能(2025年11月現在)。

    notebooklm.google.com

    このNotebook LMには、『社会学評論スタイルガイド第3版』と、修正依頼用のプロンプトをソースとして読み込ませてあります
  3. チャット欄に要修正版の文献リストを投げる。特に追加で指示(プロンプト)を送る必要はなく、リストだけ送ればOK。

  4. 修正項目の確認と修正版の文献リストが出力される。著者の姓のアルファベット順にきちんとソートされていることを確認する。

    またドイツ語文献のandがund、eds.が(Hrsg.)に正しく変換されていたりと、細かい書式上の問題が修正されている。副題のコロン→2倍ダッシュや、一重カギカッコ内のカッコの扱い、出版社所在地の抜けなどがきちんと指摘されていることがわかる。
  5. 文献リストと同時に修正対照表も出力されているので確認する。
    まず並び順だが、文献リストを見た限りでは正しくソート処理がされていたが、よく見てみると「渡會(Watarai)」の読み方が「Watoso」と認識されている。結果的に正しい位置に収まっているが、人間と同様AIも読み間違いをするので、きちんと自分の目で確認する必要がある。

  6. 形式面での修正内容も対照表として出力されるので確認する。

  7. 末尾には「エラー」として、文献の一つに出版社の所在地が抜けていることが報告されている。調べて補っておく。

  8. 出力された修正版のリストをWordに貼り付ける。このとき、旧版のリストと見比べて、きちんと誤字脱字が修正されているか、また誤った修正の仕方がなされていないか綿密に確認する。

    Notebook LMで出力された文献リストをそのままWordに貼り付けるとこんな感じ。出版地の所在地が抜けているところは「(所在地要確認)」となっているので修正する。
  9. Wordのインデント機能を使って2字下げにする。
  10. 完了!

 

注意

上記リンクのNotebook LMに読み込ませているプロンプトは、日本語・英語・ドイツ語にしか対応していない。各自の研究環境にあわせてプロンプトを再構成していただきたい。

 

7.まとめ

ソフトの導入をし、作業に慣れるまでの時間はなかなか面倒だが、1週間ほどで基本的な動作はストレスなくできるようになるはずなので、これまで文献管理ソフトに手を出せていなかった方はぜひこの気にチャレンジしてみてほしい。

私はZoteroによって書誌情報の管理やスキャンデータの管理がとても楽になった。慣れることさえできれば、導入のストレスを上回る快適さを無料で手に入れることができる。

ただ、一方で改善すべき点もあるため、それについてはコツコツ勉強しながら方法を考えていきたい。CSLの改善バージョンは近い内に作成して公開できる・・・はず。

 

長くて煩雑な記事になってしまいましたが、ここまでお読み頂きありがとうございました。

本記事の不明点や修正点があれば直接お問い合わせください。CSLやNotebook LMのプロンプトの改善案などももしあればぜひご共有ください。

メール: t.minegishi3493[at]gmail.com
Twitter (現X): @Ananasbonbon21

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:厳密に言うと、「社会学評論スタイルガイド」に則った引用参照を行う頻度が一定以上ある人

*2:とはいえこの点に関しては最新のZotero 7ではかなり改善された。かつてZoteroを導入し、その日本語文献への対応力の低さに失望したことのある方は今一度改めてZoteroを入れてみて欲しい。

*3:かつて筆者はGoogleドライブを介してPCのZoteroとiPadのPDF Expertを同期させていたが、読み込みが遅いしPCとタブレットでかなりフォルダ階層の見え方が変わってしまうのであまりおすすめしない

*4:これは科研費で落とせたりしないのか?誰か教えてください。

*5:初版の刊行年を記しておきたい場合、「出版年」のフィールドに手入力で「[1998] 2001」などと入力しておけば、文献リストにもそのように反映される。

*6:出版社の所在地がわからない場合は、同じ本をWorldCatや大学図書館のOPACで調べてると情報が出てくる。

*7:「社会学評論スタイルガイド」を用いる限りは必要ないが、何らかの理由で翻訳者の姓名を区別させたい場合は、姓名の間に記号||を入れる。

*8:なにか理由があって翻訳者の姓名をZotero側に区別して認識させたい場合(社会学評論スタイルガイド以外のスタイルを使用する際にそういうことがあるかも?)姓名の間に「||」マークを挿入しておく。例:「山田||太郎」。

*9:alt-titleのところの論題名でカギ括弧を二重カギ括弧にしているのは、題名が出力後に一重カギ括弧に囲まれるので、あらかじめ二重にしておくという措置である。ただし、後述の生成AIを使った文献リストの校正法を使う場合、この手間は不要となる

*10:既にWordやExcel等で書誌情報のリストを作っている人に関しては、上述の記述ルールと文献リストを適切な形でプロンプトにしてChat-GPT等に読み込ませれば、「その他」フィールドにコピペ可能な形で入力文字列を出力してくれるだろう。

*11:「スタイルガイド」では英語以外の文献の書き方が具体的には指定されておらず、筆者の判断に任されているが、社会学評論の過去の論文をざっと見る限りでは、慣習的におおよそどの著者も同じような文献の書き方をしている。

ウムラウト/エスツェットを日本語配列キーボードのまま入力したい【さらばドイツ語配列】

はじめに

PCでドイツ語の文章を書くとき、みなさんはどうやってウムラウト(ä, ü, ö)やエスツェット(ß)を入力していますか?

よく紹介される方法は一般的に以下の3つくらいだと思います(*Windowsの場合)。

  • ウムラウト」と検索して文字をコピペ
  • 単語登録(辞書登録)
  • ドイツ語配列キーボードの導入

ある程度頻繁にドイツ語の文章を書かないといけない環境にある人は、3つ目の「ドイツ語配列キーボードの導入」を行っている場合が多いのではないでしょうか。かくいう私もドイツ語配列を使っており、これまで日本語配列英語配列⇔ドイツ語配列を切り替えながら入力を行っていました。

ところがまぁ、ドイツ語配列キーボードってめっちゃ使いづらいんすよね……。zとyの位置が入れ替わってたり、記号の位置が全然違ったりと、既に手になじんだ日本語配列キーボードの配列と色々勝手が異なるわけです。z/yのミスタイプや、「+ってどこ押したら出てくるの…?」とかを無限回やることになります。このあたりの勝手の悪さはここで改めて語るまでもなく、ドイツ語学習者あるあるだと思います。

さて、これをどうにかできないものかと悩んでいたところ、以下のような記事が見つかりました。

ocamejp.com

どうやら「AutoHotkey」というソフトを導入すればキーボードの配列を自由に変えられるらしい。これにより、いつも通りの”日本語配列キーボード"の"英数半角入力時”にウムラウトエスツェットを入力できるというわけです。

トライ&なんかうまくいかない

上記記事の通りにソフトをダウンロードして設定をやってみたんですが、何度試してもエラーが……。コンピューターには全然詳しくないので、エラーメッセージの意味が全然わからず、何をどう修正すれば?という状況に。

上記記事で紹介されているのはWindows10なんですが、私が使っているのはWindows11。調べてみたところWindows10までの環境と11とではAutoHotkeyの動きが若干異なるらしく、旧来の設定の仕方だとうまく作動しないことがあるようです。。。

cf. AutoHotKey v2をWindows11で使う場合の注意事項 | 神経質やせ男のデジタル備忘録

別の方法で再試行

結果的に、別の方法をとることで解決に至りました。まずは上記記事の方法を試してみて、うまくいかないかつPC環境がWindows11の方がいれば、以下の方法を真似してみてください。

なお、この方法ではウムラウトエスツェットの入力方法は以下のようになります。この入力規則とは別の組み合わせで入力したい場合は、別途自分でコードを編集する必要があります。

  • ALT + A = ä
  • ALT + O = ö
  • ALT + U = ü
  • ALT + S = ß
  • ALT + SHIFT + A = Ä
  • ALT + SHIFT + O = Ö
  • ALT + SHIFT + U = Ü
  • ALT + SHIFT + S = ẞ

手順

  1. AutoHotkeyの公式ページから、旧バージョン(v1.x)をダウンロード(*執筆時現在の最新バージョンはv2.0ですがこちらはうまく作動しませんでした)
  2. ダウンロードしたexeファイルを開く
  3. "Express Installation"をクリック
  4. インストール完了したら"Exit"
  5. GitHubの以下ページにアクセス&ファイルをダウンロード

    github.com

    code→download ZIPをクリック
  6. ダウンロードしたzipを解凍し、ahkファイルを開く

    *問題なく実行されれば、画面下部にあるタスクトレイにAutoHotkeyの緑のアイコンが表示される
  7. 次回起動時に自動でこのキーボード配列が適用されるように、ahkファイルのショートカットを作成*1&スタートアップファイルに入れる。方法は以下記事の「Windows起動時に自作したAutoHotkeyスクリプトが自動的に実行されるようにする」節以下を参照のこと。

    ocamejp.com

おわりに

これで快適に、手になじんだ日本語配列のままウムラウトエスツェットを打ちこめるようになりました。地味だけど便利です。

導入自体はやや面倒ですが、一度やってしまえば以降のドイツ語入力がかなり楽になりますよ。

それでは、Tschüss!

 

 

 

*1:ahkファイルのショートカット作成がうまくいかない場合は、解凍済のumlaut-masterのフォルダをデスクトップ等に移動し、そこでahkファイルを右クリック→「その他のオプションを確認」からショートカット作成を試行してみてください。

学振DCでドイツに交換留学 #2【金策・手続き編】

はじめに

今回の記事では、学振特別研究員DCの身分で交換留学へ行くにあたって必要な手続きや経費の使い方などについてまとめる。節税の仕方や追加の助成金の申請方法などの金策についても紹介する。なお、すべて2024年現在での情報であることに留意されたい。

*前回の記事

mineta.hatenablog.com

*筆者の情報(より詳しくは前回の記事を参照)

社会学専攻

・DC2(2024-2025年度採用分)

渡航先:ドイツ

 

1 研究遂行経費の申請——税金対策!

「研究遂行経費」というのは、学振DCの研究奨励金20万円のうち3割を経費として使用することができる制度だ。この3割分が非課税になるので、学振のフォームで諸々の手続きをする際に忘れず申請しておこう。

詳しくは以下の記事を参照。

phd-kada.com

たまに「どうせ使いきれないから申請しなかった」という人がいるが、留学に行くなら渡航費をはじめ何かとお金がかかるし、仮に使いきれなかったとしても損になることはない。

年度末に経費使用の内訳を提出する必要があるのと、物品や航空券の領収書を保存しておく必要がある(直接それを大学会計や学振に見せるわけではなく、手元で保管しておくだけ)。

2 若手研究者海外挑戦プログラム——追加でお金がもらえるかも?

学振DCでは毎月20万円の自由に使えるお金と、1年あたり約80万円前後の研究費がもらえる。

これだけあればとりあえず経済的に困窮することなく留学生活を送れるはずだが、円安の昨今、渡航先の国によってはかならずしも余裕が持てるわけではない。現地でフィールドワークを行ったり、備品を購入したりする場合はなおさらだ。

しかし特別研究員は、基本的に他の奨学金を受け取ることができない決まりがある。追加で何らかのお金が欲しければ、学振と重複受給可能な助成金を申請する必要がある。

そこで申請を検討してほしいのが、日本学術振興会の「若手研究者海外挑戦プログラム」である。(*ちなみにこれとは別で「トビタテ!」も重複受給可能なようだが、申請が非常に手間なのと採用率が相対的に低いので個人的にはあまりおすすめしない。)

ホームページの記載によると、本プログラムの趣旨は以下のようなものだ。

博士後期課程の学生等が海外という新たな環境へ挑戦し、3か月~1年海外の研究者と共同して研究に従事できるよう、100~140万円(派遣国により異なる)の滞在費等を支給し、将来国際的な活躍が期待できる豊かな経験を持ち合わせた優秀な博士後期課程学生等の育成に寄与するプログラムです。

要するに、留学したい博士課程後期課程を経済的に支援してくれる。

ただし、既に学部時代や修士課程時代に長期の留学経験がある人は申請できない点に注意を。要項に申請資格として、「本プログラムの採用開始までに、連続して3か月以上、研究のために海外に滞在した経験がない者。」とある。

これが通ると往復の航空賃金+滞在費(100-140万円)を支給してくれるとのことなので、DCの科研費も合わせれば一切自腹を切ることなく留学生活を送れるだろう。

本プログラムの申請書は、DCの申請書の1枚目と2枚目だけを切り取ったようなフォーマットで、ある程度DCと互換性がある。ただし、渡航の必要性や意義、研究との関連性をしっかり書けないといけないので、丸々同じものを出してもダメだろう。また、DCと違ってかならずしも自身のディシプリンに関連する審査員ばかりが読むわけではなさそうなので、それも注意点だ(「社会学関連」みたいな、自分の研究分野のカテゴリを入力するフォームがなかった気がする)。

加えて、本プログラムは海外の大学の研究者に受入れてもらうことが前提になっているので、申請に先立ってあらかじめ海外の研究者に受入許可を取っておく必要がある。申請の段階で正式な受け入れ許可証が必要なわけではなく、あらかじめメール等で許可を取っておいて、プログラムに採用されたら受入証明証を発行してもらう流れになる。

なお、筆者は本プログラムに応募したものの、残念ながら不採用(B)であった。DC2に通った際の申請書をベースに修正を加えたものを提出したが、ドイツに渡航する必要性と意義がうまく伝わらなかったようだ。

3 特別研究員奨励費(科研費)から日当・滞在費を支出

年間約80万円前後もらえる学振DCの研究費だが、これは物品の購入や航空賃の支払いだけでなく、留学中の日当ないし滞在費として割り当てることが可能だ。これは留学をはじめ在外研究を行うなら絶対にやっておいた方がよい。

具体的な手続きは大学の総務の科研費担当の方に早めに相談しよう。

私の所属大学では、渡航期間中に日当・滞在費として支出する研究費の上限額や渡航経路などを担当者に提出すればOKだった。

私は残っている研究費を満額、留学中の日当・滞在費に当てた。一日あたりいくら日当を出せるかは大学内の規定に従うようだ。

これをしておくと、日当という形で研究費を受け取ることができる=お金を自由に使えるのですごくありがたい。

4 学振に海外渡航届を提出

渡航の1か月前までに、学振マイページから海外渡航の申請を行う。

5 住民票を抜く——税金・保険料の節約に!

盲点になりやすいのが、渡航期間中の国民健康保険料や年金だ。

周知のとおり、学振の収入があると独立生計になり、国民健康保険に加入したり住民税を支払ったりする必要が生じる。

しかし、渡航期間が長期の場合、海外転出届を市役所に出して住民票を抜いておくと、その期間中の保険料や年金、住民税は払わなくてよくなる。

渡航の2週間前~に市役所へ行き、手続きを済ませておこう。

6 在外選挙人名簿の登録——渡航先から投票ができる!

上記5と同じタイミングで済ませておきたいのが、在外選挙人名簿の登録だ。

これを行うことで海外の滞在先でも投票を行うことができる。在留届に登録した海外の住所宛に在外選挙人証が届くようだ。

転居届を出す際に、窓口の方に「在外選挙人名簿の登録をしたいのですが・・・」と尋ねれば、必要な手続きについて教えてもらえる。筆者が手続きを行ったときは自分から言わないと案内がなかった。

市役所の選挙管理委員会の部署へ行き、必要書類を記入する。

このとき、本籍地の情報を記入する欄があり困ったので、あらかじめ住民票などで確認しておくことをおすすめする。あるいは、運転免許証の読み取りができるスマホアプリをダウンロードすれば、免許証から本籍地を確認することも可能だ。

 

まとめ

学振DC×留学の情報はあまりインターネット上に落ちておらず、学内の先輩後輩間で密かに共有されていることが多い。

本稿に挙げた以外にも必要な手続きはたくさんあるはずなので、学振や教務からのメール、特別研究員の手引きなどをよく読んで動いてほしい。

以上。

 

 

 

学振DCでドイツに交換留学 #1【決断&学内選考編】

本記事の背景と目的

2024年度から学振DC2に採用されることになった。お金が降ってきたので、だったら留学にでも行くかと思い立ち、大学の協定を使った交換留学に行くことにした。

学振のお金を使って交換留学へ行った人の情報がネット上にあんまり落ちていないので、後進の方々に向けて情報共有を行っておこうと思う。

気が変わらなければ、以降何回かに分けて、留学が決まるまでの流れや学振の制度の使い方などについて記事にしていこうと思う。備忘録がわりに書いている側面が大きいので無駄な情報も多いかと思うが、ご容赦を。

*筆者の情報

本題に入る前に、あらかじめ私の専攻や外国語レベルなどについて記しておく。分野が大きく異なる方や、私と違って既に豊富な留学歴がある人にとってはこの記事は参考にならないかもしれないのでご留意を。

  • 専攻:社会学(理論研究)
  • 年次:博士課程2年(執筆時現在)
  • DC2採用期間:2024~2025年度
  • 研究で使う言語:ドイツ語、英語、日本語
  • 留学経験:なし
  • ドイツ語学習歴:2年くらい?
    • 私は学部時代ドイツ語選択でなかったので、修士課程進学後から独学で勉強を始めた。読む訓練は2年半ほど継続しているが、それ以外の「書く・聞く・話す」技能はだいたい学部2回生くらいのレベルだと思う(GoetheでいうとA2とか)。要するに全然できない。
    • 論文に出てくる堅苦しいドイツ語は知っているが日常語を全然知らない、といった感じで知識の偏りが顕著。Einheit(統一)は分かるけどEi(卵)は分からない、みたいな。
  • 留学期間:2024年9月~2025年9月(1年間)
  • 渡航先:ドイツ

 

1 学振内定&留学に行くことを思い立つ(D1・2023年9月)

2023年の9月末、学振DC2に採用内定が決まった。少なくとも2年間は経済的不安を抱えなくてよいという安心感と、苦労して書いた申請書が評価された達成感で、1週間くらい浮かれていたと思う。

少し落ち着いてきた頃に頭に浮かんだのは、「あれっこれ留学行けんじゃね?」ということだった。お金あるやん、という。

よく考えたら、提出した学振の申請書にドイツへ渡航する旨は書いていたので、”学振が下りたら留学”というのは自分の中で決まっていたことだったのだが、そもそも学振が本当に通るとは予想だにしていなかったので、慌てて留学について調べ始めることになった。

 

学振の研究費を使って留学に行く方法は、大きく分けて2つある。

  1. 大学の協定を使わない研究留学:海外の大学の研究者に直接許可をとって受入れてもらう(研究指導委託)
  2. 大学の協定を使った交換留学:自分の所属大学の協定を利用する

上の1.の場合、直接メールをするか人づてに連絡をとって海外の研究者に指導委託の許可をとり、受け入れ許可証を発行してもらう必要がある。2.の場合は、大学のプログラムを利用して留学するので手続き面は相対的に楽である。

ネット上で調べてみると、人文系の院生が学振のお金を使って留学に行く場合で多いのは、「研究指導委託」をするもの——つまり海外の大学の研究者に直接受入れてもらい、そこで資料収集をしたり指導を受けたりするというもの——である。授業はほとんど受けず(ゼミに出るくらい)、図書館に籠って自分の研究に集中、というスタイルが多いようだ。当然、そこには「語学が既にひと通りできる」という基本的前提がある。

だが、先述の通り私は大学院進学後からドイツ語の勉強を始めた事情があり、その上「読む」練習しかしてこなかったため、語学力が極めて低い。本当なら「研究留学」というよりかまず「語学留学」をしたいくらいなのだが、あいにく学振で語学留学はできない。手引書に「語学研修を目的とした海外渡航はできません」と明記されている。

そこで私は、大学の協定を利用した交換留学に行くことに決めた。交換留学であれば向こうの大学で一応語学の授業も受けられるし、何より大学の留学センターのサポートを受けられるのが安心だ。留学経験のない語学弱者の私にはちょうどよいと考えた。

 

2 学内選考(D1・2023年10月)

申し込み

交換留学に行くとなると、期間はD2後期からD3前期にかけての1年間が妥当だと考えた。というか、学振がもらえる期間がD2~D3までなのでそれしか選択肢がない。

当時D1の私は、「じゃあ1年後から留学行くか~」と呑気に考えていた。のだが、よくよく調べてみると、どうやら交換留学というのは開始1年前くらいの時期に学内選考があるらしい。つまり今。要項を見てみると、選考申し込みの提出が1週間後に迫っている。慌てて志望動機書などを書き上げ、学内選考に申し込んだ。

学内選考の要項には、語学能力の要件として「B1以上」とか「B2以上を推奨」とか書いてあったが、そもそも学振が通るまで留学に行くつもりを全然していなかった私は、ゲーテ試験など受けたこともなかった(そもそもGoethe-Zertifikatの存在を知らなかった)。志望理由書では、とりあえずドイツ語の「読む」能力に関してはずっと継続して勉強してきたことをアピールした。

ヤケクソ面接

学内選考は書面審査と面接の二段階で決まる。何より問題なのはこの面接だった。先輩からの情報によると、面接では半分ドイツ語で質問が飛んでくるらしい。要するにこちらのドイツ語の会話能力を直接審査されるというわけだ。

マズい。なにせ私はそれまでドイツ語の授業に出たことも語学試験の勉強をしたこともない。要するに、「話す」のも「聞く」のも一切やったことがない状態で面接を受けることになる。

面接の当日までは2週間ほどあったが、そんな期間でドイツ語会話ができるようになるわけがない。私は最低限のフレーズ(自己紹介や志望動機)だけ丸暗記して、あとはノリと愛嬌で乗り越えることにした。

 

面接はZoomを使ったオンライン形式で、画面の向こう側に選考担当の先生方が5人ほど参加されていた。もちろん全員ドイツ語を話せる先生方である。

ドイツ語でのやり取りは、それはもう酷いものだった。質問内容は、"Wie heißen Sie?"(お名前は?)とか"Wie lange lernen Sie Deutsch?"(どれくらいの期間ドイツ語を学んでいますか?)といったごくごく簡単なものだった。が、リスニングの練習をほとんどやっていない私は全ての質問を何度も聞き返しまくった("Noch einmal, bitte"の連発)。文字で見ればどの質問もすぐ意味を理解できたと思うが、文字情報の処理と音声情報の処理はやはり全然違う能力が必要なようで、「聞き取れないうえ答えられない」という想定通りの地獄が待っていた。

今思えば、一発目のやり取りから私のドイツ語会話能力が著しく低いことは露見していたので、先生方はドイツ語での質問レベルを相当下げてくれていたように思う。なんとか質問の意味を汲み取り、一応全部答えはしたが、語彙力は赤ちゃんレベルだし、文法なんてあってないようなものだった。

日本語パートの方で、自身の学習歴やドイツ語会話の練習をやったことがないこと、知識・語彙に偏りがあることなどを説明したが、そうした事情を差し引いても酷い出来栄えだったように思う。(後になって研究科の先生づてに聞いたことだが、このときの私のドイツ語会話能力があまりに低すぎて、危うく不合格になるところだったらしい。)

お情け合格?

面接の手ごたえは最悪だったが、結果は無事合格で、第一志望にしていた大学に留学できることになった。

後から知ったが、学内のドイツ留学志望者の数がそもそもかなり少なく、大幅に定員割れだったようだ。倍率が1を超えていたら絶対に落とされていたはずなので、これはラッキーだった。

ドイツ語力の不足を補うため、大学のドイツ語の授業に出たり、語学学校(ゲーテ・インスティトゥート)に通ったりする生活が始まった。

 

まとめ

学振DCを申請している人で、採用されたら留学に行きたいと考えている人は少なくないと思う。ただ、学振に通る前から通った後のことを具体的にイメージするのは難しい。

私は採用内定してから留学の準備に入ったので、準備期間が十分に確保できず、かなり準備不足の状態で渡航することになってしまった。

DC1ならまだしも、DC2で1年間の交換留学に行くとなるとスケジュールがタイトなので、せめて語学の準備くらいは早いうちから本腰を入れて進めておいたほうがよい。

 

次回の記事では、学振特別研究員の身分で交換留学へ行くにあたって必要な手続き関連の話をしようと思う。

以上。

 

 

 

 

【Juiris-M】翻訳書の書誌情報を入力する方法

はじめに

既に過去の記事で紹介したように、文献管理ソフトZoteroの上位互換として作られた「Juris-M」というソフトがある。

このソフトの最大の売りは、「多言語対応」という点にある。

簡単に言うと、既存のZoteroだと日本語の著書も外国語の著書も同じフォーマットでしか文献リストを出力できないが、Juris-Mだとそれらを区別して出力できる。詳しい説明は過去の記事を参照して欲しい。

 

mineta.hatenablog.com

 

社会学評論スタイルガイド」に則った翻訳書の扱い

この記事で扱うのは、Juris-Mで「翻訳書」の情報を文献リストに出力するやり方だ。

筆者が専攻する社会学分野でメジャーな形式である「社会学評論スタイルガイド」では、翻訳書の情報の書き方について以下のようなルールがある。

 

書籍の場合

  • 原典の書誌情報.(訳者名訳,翻訳の出版年,『訳書のタイトル』出版社名.
    • 例:Fromm, Erich, 1941, Escape from Freedom, New York: Reinehart and Winston.(日高六郎訳,1951,『自由からの逃走』東京創元社.)

論文の場合

  • 原典の書誌情報.(訳者名訳,翻訳の出版年,「翻訳論文のタイトル」所収書の編者名編『所収書のタイトル』出版社名,翻訳論文の初ページ-終ページ.)
    • 例:McCarthy, John M. and Mayer N. Zald, 1977, “Resource Mobilization and Social Movements: A Partial Theory,” American Journal of Sociology, 82(6): 1212-41.(片桐新自訳,1989,「社会運動の合理的理論」塩原勉編『資源動員と組織戦略――運動論の新パラダイム新曜社,21-58.)

 

要するに、海外文献の原典を示したうえで、括弧付きで邦訳書の文献情報を載せる必要がある。

しかし普通のZoteroには「翻訳書」という概念がないため、こういう形で文献リストを出力することはできない。

そこを解決してくれるのがJuris-Mというソフトである。

Juris-M公式(?)の情報

翻訳書の書誌情報の入力方法については、既に公式の案内ページでレクチャーされている。

出典:「多言語出版物と文献目録」https://juris-m.readthedocs.io/en/latest/tutorial-ja.html#id6

 

juris-m.readthedocs.io

 

ただ、ここで案内されているのは「書籍」の場合のみで、「学術論文」の邦訳や、「論集のうちの1章」の邦訳の場合にどう入力すればよいのかが分からない。

論文の場合

色々試した結果、以下の入力項目に則ればうまく外国語論文の邦訳版を文献リストに反映できることが分かった。

今回出力してみるのは以下の論文。

 

Luhmann, Niklas, 1997, “Globalization or World Society: How to Conceive of Modern Society?,” International Review of Society, 7(1): 67–79. (大黒岳彦訳,2014,「『グローバリゼーション』か、それとも『世界社会』か」『現代思想』7(1): 86–101.)

 

文献情報の「その他」のところに入力する項目は以下の通り。

 

alt-translator: ||

alt-issued:

alt-title:

alt-container-title:

alt-volume:

alt-issue:

alt-page:

 

今回の例でいえば、次のように入力する。

alt-translator: 大黒||岳彦
alt-issued: 2014
alt-title: 『グローバリゼーション』か、それとも『世界社会』か
alt-container-title: 現代思想
alt-volume: 7
alt-issue: 1
alt-page: 86-101

 

「alt-container-title」がジャーナルの名前になる。

「alt-title」に論文自体の名前を入力する。自動で鍵括弧(「」)が付くので、論文タイトルに鍵括弧が含まれる場合、あらかじめ二重括弧(『』)にしておく。

「alt-translator」の欄は一応苗字と名前の間に||を入れるルールになっているが、社会学評論スタイルガイドを使うだけなら無視してもよい。

論集の場合

次の論集を引用する場合を考える。

Luhmann, Niklas, 1995, “Die Form ‘Person,’” Soziologische Aufklärung 6: Die Soziologie und der Mensch, Opladen: Westdeutscher Verlag, 142–54. (村上淳一訳,2007,「『人格』という形式」『ポストヒューマンの人間論――後期ルーマン論集』東京大学出版会,117–40.)

文献情報の「その他」に入れる項目は次の通り。

alt-translator: ||

alt-issued:

alt-title:

alt-container-title:

alt-publisher:

alt-page:

今回の例だとこう。

alt-translator: 村上||淳一
alt-issued:2007
alt-title: 『人格』という形式
alt-container-title: ポストヒューマンの人間論――後期ルーマン論集
alt-publisher: 東京大学出版会
alt-page: 117-140

 

以上。

 

 

ZotFileのリネーム機能で著者名をフルネーム表記にする方法

はじめに

Zoteroユーザーがかならずと言っていいほど使うアドイン、ZotFile。

これはインポートした論文のファイル名を、あらかじめ定めた規則に従って「リネーム」してくれるというもの。

ZotFileの公式ページにはいくつかの「ワイルドカード」が紹介されていて、これに従って自分好みのリネーム規則を設定することができる。

出典:http://zotfile.com/index.html#renaming-rules

たとえば、Renaming Formatの欄に、

  • {%a}{-%y}{-%j (%s)}

と入力すれば、どの論文PDFも一括で、

  • Abbott-1990-American Journal of Sociology (AJS)

のような感じにファイル名を付けてくれる。

著者名をフルネームで表記するコマンドがない

ただここで紹介されているコマンドには、「著者名をフルネームで表記する」ものがない。「ラストネームだけ」(%a)や「イニシャル」(%I)、「ラストネームとファーストネームの頭文字」(%F)といった組み合わせはあるのに。

日本人が書いた論文を管理する上では、姓だけの表記や頭文字だけの表記は非常に不便だ。鈴木さんとかいっぱいいるし。全部一括でフルネーム表記にしてくれた方が分かりやすい。

フルネーム表記は「%g」で解決

結論から言うと、%gと入れればフルネームでリネームしてくれる。

私は著者名に加えて発行年・タイトル・ジャーナル名が欲しいので、Renaming Formatのところは以下のように記入している。

  • {%g_}{%y_}{%t}{_%j}

これで、下記画像のような感じでリネームしてくれる。

参考

欧文の場合はこんな感じ。書籍なのでジャーナル名は入っていない


以上。